本研究は、エピタキシャル成長時の成長条件における基板の表面状態に関する検討を、超高真空中の接触角測定で行おうとするものである。本年度に得られた結果を以下に述べる。 (1)現有する水滴の接触角を測定する装置でGa液滴の接触角測定の予備実験を行った。Gaはおよそ30℃で液体となったが、その大きさは10μl程度になってしまった。そこで、我々が水滴での接触角測定で用いている量である1μlと同程度にするために、塩酸を含ませたろ紙を使ったGa液滴の製作法を新たに開発した。 (2)まず硫酸系エッチングを施したGaAs基板上に固化した状態のGaの液滴を載せ、わずかに加熱することや窒素中で200℃前後に加熱することでGaを液体に戻し接触角を求めてみた。しかしながら接触角は測定できなかった。我々の接触角測定法はレーザーを水滴に当てその投影光から接触角を測るという方法である。水滴と異なりGa液滴の表面は酸化膜で覆われており光沢がないことが確認されたため、このことが接触角測定を困難にしている原因と考えた。超高真空装置内部でのGa表面の酸化物の除去が不可欠であることが明確になった。 (3)現有する真空蒸着装置内で水素プラズマ処理を加えたGaAs基板を、窒素雰囲気容器で移動させ、窒素雰囲気中で水滴をGaAs等の基板上に載せ、接触角を測定した結果、空気中での測定より高い接触角が得られ、明らかな違いが出た。これは、空気にさらさない本研究のような検討・測定が重要であることを示唆している。 (4)購入した超高真空装置で液滴の接触角が測定可能となるように、基板ホルダー、ガス導入系を組み上げた。
|