本年度はエネルギーフィルター型RHEED装置を用い、主としてSi(111)表面上のAlの成長表面の研究を行った。RHEED強度振動に対する非弾性散乱電子強度の影響を調べる研究の基礎実験として、ますSi(111)7x7表面とSi(111)√3x√3-Al表面の2種類を基板表面として用いた場合の室温でのAlの成長様式の違いを明らかにした。ここでは、エネルギー損失は変えないで30eVに固定して実験を行った。Si(111)7x7表面上のAl成長では、RHEED強度振動測定は初期の大きな強度増大の後、ゆるやかに減衰する様子を示し、振動らしき振舞いは見られなかった。また回折図形も成長初期のα-7x7構造を経た後、斑点状の透過回折図形を示すことから島状に成長することがわかった。回折図形からこの島結晶は、Al(001)面がSi(111)表面に平行に、またAl[-110]がSi[-110]に平行もしくは120゚づつ回転した方位を持つことがわかった。一方、Si(111)√3x√3-Al表面上のAlの成長では、RHEED強度振動測定は最初鋭い強度減少と鋭い強度増大の後、減衰しながらも周期的な振動が観測された。また、回折図形もストリーク状となり、不完全ながらも層状に成長することがわかった。回折図形からこのAl膜は、Al(111)がSi(111)表面に平行でAl[-110]がSi[-110]と平行な方位関係を持つことがわかった。 その他、ゼロロスのEF-RHEED図形からSi(111)γ-Al表面構造は、9x9の不整合表面構造であることを運動学的計算を用いて解析した。また、LiやAlをSi(111)表面に成長させた時の鏡面反射電子のエネルギー損失スペクトル変化を観測し、そのピーク変化から表面形態の変化や構成元素に関する知見が得られることを指摘した。
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