最初、XeF_2の気化から生じるフッ素原子/水素終端Si(111)表面反応を、高分解能FTIR(フーリエ変換赤外分光)-ATR(減衰全反射)/単X線使用XPS(X線光電子分光)結合システムで詳細に調べた。ここで、曝露初期では、フッ素原子は終端水素と反応除去せずにSiの最表面に侵入し、極く初期では原子状として存在し、この状態は終端水素を本来の2083cm^<-1>(B_1)から少し高波数側の2086cm^<-1>(B_2)にシフトさせ、更にフッ素の曝露で原子状からSiF結合を5配位状態で形成し、より高波数側の2090cm^<-1>(B_3)にシフトさせることが判明した。B_1ピークのみならずB_2とB_3ピークもS偏光では観察されず、ATRで得られた全ての吸収ピークは、表面に5度以内に垂直に立つSiH結合であることが判明した。しかし、より多くフッ素原子を曝露すると、Siの自発的にエッチングにより表面は粗になり、自己停止反応には至らなかった。そこで、本来Siと低反応性のF_2分子に変え、5%F_2/He/水素終端Si(111)表面反応を研究した。反応初期は、B_3ピークが更に高波数側にどんどんシフトし、最終的に2100cm^<-1>付近までシフトが見られた以外は前述のF原子反応と同様であった。しかし、さらにF_2曝露を増加すると10^5L〜10^7Lの広範囲で反応が自己停止し、表面が1原子層のSiF_1層を形成した。このSiF単分子層から放出されるX線光電子強度の角度依存性を、衝突断面積、角度非対称性、装置関数などを完全に求め、補正した結果、やはりSiF単分子層形成が実現していることが完璧に証明された。反応中常に未結合Fが存在することも判明した。更に、この表面を酸化すると、フッ素が酸化膜の最表面に移動したり、この表面を純水に浸すと、直ぐに酸化されることも分かった。
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