研究概要 |
電子状態、フォノン構造、原子構造に関する実験と理論計算から、Ni(111)表面上の単原子層六方晶窒化ホウ素超薄膜はバルク結晶とは著しく異なる金属的性質を示すことを明らかにした。つまり、界面固有の新物質層を発見した。 Ni,Pd,PtおよびTaC(111)表面上にCVD法で成長させた単原子層六方晶窒化ホウ素超薄膜の電子のバンド構造、原子構造およびフォノン構造について調べた結果、Pd,PtおよびTaC基盤の場合、エピタキシャル膜の格子と基盤格子の並びは不整合の関係にあり、基盤と膜との相互作用は弱いことが判明し、一方、Ni面上では基盤と整合した格子を構築し、層間の結合は極めて強いことが分かった。 このことを反映して、フォノンの分散関係の異常(LOフォノンとTOフォノンのΓ点での縮退と面に平行方向の双端子場の消失)やランプリン構造およびπ電子バンドのシフトを観測した(Phys.Rev.Lett.79,1997,4609-4612)。 以上の現象を理解するために、第一原理に基づきバンド計算を遂行した。その結果、基盤と超薄膜の間隔(層間)を変化させることにより、π電子のバンドを大きく変化させ、新たな混成バンドを形成し、バンド・ギャップが消失することが判明した。このことは、窒化ホウ素のエピタキシャル膜の内外で、膜に平行方向の電場が消失するフォノン分光の実験事実と良く対応している。つまり、窒化ホウ素のπ電子は自由に動き回っており、この電子の集団運動が、膜平行方向の電場の遮蔽の原因となっている。
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