清浄シリコン表面上に1層以下の銀原子を蒸着して形成されたAg/sI表面を、水素原子に曝すと、銀原子が表面上で島状に凝集する(クラスターリング)。この現象を、この数年、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて原子寸法にて観察している。その一貫で本年度前半は、水素で終端されたSi(100)表面上に銀原子を蒸着したときに形成される表面構造を調べた。この場合もSi(111)と同様にAgのクラスターが形成され、その大きさは30nm径程で比較的に小さく、また、その分布が一様である。そして、表面の温度上昇と共にその径を増し、それに伴ってクラスターの数が減ることが明らかになった。これらの結果を、11月27日に早稲田大学開催された国際会議第6回池谷コンファレンスにおいて発表した。 年度後半は、イオン散乱分光(ISS)で明らかにしたがSTMでは未だ観察されていない、鉛/シリコン系における水素クラスターリングについて調べた。清浄表面Si(111)-7x7上にPb原子を蒸着して形成されるSi(111)-√3X√3-PbとSi(111)-1x1-Pb構造をSTMで確認し、その表面に水素原子を照射することによって、Pb原子のクラスターリングを確認することができた。Agと較べてPbは表面移動度が小さいためか、サイズの小さいクラスターがたくさん形成されることが判明した。この結果を、平成9年7月にハンブルグ(ドイツ)で開催される国際会議STM'97において発表すべく、参加申し込みを行った。
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