まず電子分光器および回転機構の設計試作を行った。当初はストレイ電子等の影響でバックグランドが大きかったが、分光器の内部の壁に電子を吸収並びに乱反射を促すコウ-テイングを施すと大きく改善した。このようにして試作した装置を用いて基礎的な実験を行った。表面の構造を求めることが第1の目的なので、銅をシリコン上に成長させたた場合の表面構造並びに水素終端面上の成長と構造を求める試みを行った。その結果、高温で銅をシリコン(111)面上に成長させたときに生じる"5x5"の不整合構造の各層の層間距離を求めることができた。横方向の構造については不整合構造であるため求めるには到らなかった。また水素終端された表面上では銅は非常に大きなマイグレーション距離を持ち、清浄な表面に比べるとその値は3桁も大きいことがわかった。これは銅とシリコンは非常に反応しやすい系であるが、水素が終端することにより銅はシリコンと直接反応する前に表面をマイグレーションするためであると考えられる。このような現象はシリコンとの反応が強くない物質では見られない。エピタキシ-という意味では水素はネガテイブな働きをするが、逆に早い表面マイグレーション速度を利用して自己組織化のよる極微構造作製の可能性があることを示唆している。
|