状態分析可能な構造解析の手法として有力な光電子回折法を実現するため、高分解能分析器の設計と試作を行い、それを表面の構造解析ならびに結晶成長過程の解明に応用した。具体的には、電界のエッジ効果を含んだトロイダル静電分析器内での軌道計算を行い最適設計の実現を図った。角度分解能を上げるため、90度型の分析器を採用した。その結果、エッジ効果のため電極構造が丁度90度ではだめで89.1度にした場合が最適であることがわかった。このような設計値を用いて分析の試作を行った。その結果、エネルギー分解能はΔE/E=4.2x10^<-3>となり、設計値の4x10^<-3>とほぼ同じになった。角度分解能は0.5度でこれもほぼ設計値に近い値になった。このような分析器を用いて得た結果概要を以下に記す。 水素終端されたシリコン上の、銅の成長過程について詳しい実験を行った。300-400℃に温度を上げた水素終端表面では銅がマイグレーションし易く、長い距離をマイグレーションした後島を形成することがわかった。この島の大きさは水素終端の仕方や温度によっても異なる。条件を選ぶと20nm以下でサイズが揃った島が形成する。この島は量子ドットとして使用することも可能で、新しいドット形成法になる可能性があることがわかった。また、複雑なCu/Si(111)“5x5"不整合構造の解析を行った。非常に詳細にそれぞれの原子層間の距離を求めた。
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