研究概要 |
本研究室で開発した内視鏡分光器を用いて測定した可視光400nmから700nmの胃粘膜分光反射率約1000個のデータから310個の分光反射率を選択し主成分分析を行い,胃粘膜分光反射率が3個の主成分により再現できる事を明らかにした.再現の精度は,L*u*v*均等色空間の平均色差2.66であった.ここから,電子内視鏡で撮影された画像から胃粘膜の分光反射率を2次元的に推定する事が可能となった. このように推定された胃粘膜の分光反射率を基礎として,撮影光現の分光反射率,レンズ,ファイバーなど光学系の分光透過率,CCDセンサーの分光感度,モニターの分光特性を考慮した電子内視鏡の色再現モデルを構築し,計算機シュミュレーションによる粘膜色の再現予測を行った.実験はCIE-標準A,D65など12種類の光源に対する癌、委縮性粘膜、ポリ-プなど7種の疾病と正常粘膜についての色再現予測を行った。また、再現された画像について医師の診断と色度の分散を尺度とした評価を行った.色再現に関する主観評価では現在の電子内視鏡に使用されているXeランプが高い評価を得た.しかし,微細血管の視認性ではXeランプより優れた光源が明らかになった.本シミュレーションモデルにより光源ばかりでなく,センサー,光学系の分光透過率変化に伴う色再現予測も可能となった。 以上は,測色的色再現に基づくモデル化である。しかし電子内視鏡ではモニター観測時の外部光源の影響による視覚の色順応特性が無視できない.色順応については,Von Kries,Fairchild,LABなどの各種提案モデルに基づいて色票,顔画像についての基礎的実験を行ない新しい順応モデルを提案した.現在,この色順応モデルを内視鏡画像の色再現,色域圧縮に適応すべく研究を続けている。
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