研究概要 |
光を超高周波の電磁波として利用するには,現状の光回路は光路長が温度に依存して光の位相を温度1℃当りで数波長分も変動させるので,光の位相まで制御した光波回路の実現を困難にしている.この問題を解決するには,光導波路の光路長の温度依存性を零にしたアサーマル光導波路を用いて光回路を構成する必要がある.そこで本研究では,報告者らが考案して可視波長帯で実現したアサーマル光導波路を光通信用の赤外波長帯で実現し,さらにこれを用いた赤外波長帯用温度無依存狭帯域波長フィルタの実現を目指した. まず波長1.3μmでの導波路材料の屈折率温度係数を薄膜状態で測定して,これを設計の基礎データとして,SiO_2を下部クラッド,NA45ガラスをコア,PMMA(ポリメタクリル酸メチル)をリッジ装荷層とする3次元アサーマル光導波路を設計,試作した.その光路長温度係数を測定したところ,-9.65×10^<-9>と従来の0.1%まで低減して,波長1.3μm用3次元アサーマル光導波路の実現に成功した. 次に,この3次元アサーマル光導波路を用いて,狭帯域波長フィルタの1種であるリング共振器(リング半径を5mm,スペクトル間隔0.037nm))を設計・試作して,そのフィルタ中心波長の温度依存性を測定した.波長特性の測定には発振スペクトル幅が狭いDFB型半導体レーザ(波長1.3μm)を用い,レーザの温度を変化させることによって発振波長を変化させた.その結果,製作したリング共振器の波長特性の温度依存性は0.0007nm/Kと求められた.この値は従来型光導波路を用いた場合の7%にまで低減されており,温度無依存狭帯域波長フィルタの実現にほぼ成功した.フィルタ中心波長の温度係数が完全に0にならなかったのは,ストリップ装荷型導波路の装荷層幅が設計値からずれたためと考えられる.
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