高分子・液晶などのソフトな物質系ではその外力に対する応答が容易に非線形となるために、非線形緩和スペクトロスコピーがダイナミックス測定法として有用であることに着目して、昨年度に引き続き、疑似白色雑音入力を用いた非線形緩和スペクトル測定システムの開発を行なった。また、開発されたシステムの評価を行なうために非線形回路および強誘電性液晶に対して、広い周波数範囲での非線形緩和スペクトルのリアルタイム測定を行なった。この際、測定に用いた疑似白色雑音信号の各周波数成分の振幅が時間的に大きく変動したため、各回での振幅で規格化したスペクトルを積算して測定を行なった。この結果、非線形回路の場合には線形・非線形いずれの緩和スペクトルも極めて短時間の積算により、良好なスペクトルを得ることができた。一方、強誘電性液晶の場合には非線形スペクトルは長時間の積算にもかかわらず、不完全なスペクトルしか得られなかった。これは、線形成分に比して非線形成分が小さい場合には雑音信号のパワースペクトルの時間的な変動が大きいことやFFTのビット分解能が測定精度の限界を制限したためであると考えられる。 さらに本年度は、液晶のダイナミックスを感度良く測定する方法として、その光学的異方性が大きいことを利用した周波数域非線形電気光学スペクトロスコピーを開発し、強誘電性・反強誘電性液晶に適用することでそのダイナミックスに関して新たな知見を得ることに成功した。 以上、本年度は新たに開発された非線形緩和スペクトロスコピーを実際のシステムに適用することによりその物性診断法としての有用性を示すことができた。
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