研究概要 |
単結晶シリコンの結晶異方性エッチングプロセスをマイクロマシニングの観点から研究した.前年度のKOH水溶液に引き続き,今年度は4メチル水酸化アンモニウム(TMAH)水溶液について,エッチレートの全方位に関するマップを作成した.実験条件はTMAH濃度が5〜25%,温度が70〜90℃である.この結果,(111)周辺のエッチレートの結晶異方性がKOHとTMAHとで明らかに異なることが判明した.これは,結晶異方性がダイヤモンド結晶構造に由来するという従来の説では説明できない事実であり、結晶異方性エッチングの機構に結晶原子の結合エネルギ以外の要因が存在することを示した. 次いで,KOH水溶液による結晶異方性エッチングにおけるエッチング面の粗さについて研究を進めた.面粗さを結晶方位との関係におけるマップで表し,面粗れの進行は加工面の結晶方位に強く依存することを明らかにした.平滑な面は(100)(211)(311)に現れ,非常に粗い面は(320)(210)に現れる.エッチングにより粗面化した面をミクロ的に観察すると,表面は特定の結晶方位からなる多面体で構成されていることが判った.この事実から,エッチレートの結晶異方性とエッチング面の粗面化に何らかの関連があるものと考える. 本研究の結果得られたエッチレートのデータは,マイクロマシンデバイスの製作工程設計におけるプロセスシミュレーションを可能にするものであり,工業的に直接貢献すると同時に,エッチングメカニズムの原子レベルのモデルを確立するという学術面において,貴重な実験データとなる.この見地から,オランダ,トエンテ大学を初めとする物理化学研究者との共同研究を開始する運びとなった(平成10年度科研費国際学術研究-共同研究に採択).
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