本研究は、各種材料の変形や破壊の挙動を、光計測を用いたマクロな観点からと、電子放射などのフラクト放射計測を用いたミクロな観点から調べることにより破壊に至る現象を探究しようというものである。 光計測法として、本年度は、電子スペックルパターン干渉法を用いるとともに、さらにスペックル写真法も加え、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン材料を中心に調べた。観測用の低温真空クライオスタットに改良を加え、室温から100K付近まで試料を冷却した場合の変形挙動をリアルタイムに観測することができるようにした。電子スペックルパターン干渉法に二光束法を用いることにより、試料面上に冷却過程の熱ひずみの分布を直接得ることができた。さらに試料の温度分布をモニターすることにより熱膨張を算出し、一般の膨張計で得られた公表値と比べた結果、妥当な値であることが確認された。また、ステンレス鋼(2mm)については圧延の影響が試料の面内収縮にどの程度及ぼすかを調べたが、ある程度の差が生じたものの顕著な差は確認できなかった。試料の厚さをさらに薄くするか、あるいは冷却温度をさらに下げることにより、大きな変化があるものと考えている。 フラクト放射計測については、小型冷凍機を組み込むことにより、極低温/高真空の実験装置を作製した。現在、試料を室温から20Kまで冷却することができ、真空度は約10^<-6>Paである。測定対象物は、Pb-Sn共晶はんだ、PbフリーのBi-Snはんだ材で、レーザはんだ付け接合面を破壊させ、フラクト放射との関係について調べている。 次年度は、光計測用の真空クライオスタットに、液体窒素の代わりに小型冷凍機を用いて冷却を行い、室温から100Kないし10Kまでの冷却過程での変形挙動をモニターすることを目指す。また、本年度購入した四重極質量分析計を本装置に組み込み、試料の破壊時に生じた飛散分子やガスの同定を試みる予定である。
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