分子性結晶(TMTSF)_2PF_6の単結晶に発生した双晶変形の境界面が、一定の外力によって容易に結晶成長方向にそって運動する。一定応力の印加のもとで、デジタルスピードカメラによってその運動の様子を精密に測定し、以下の結果を得た。 1 印加応力が一定であるにも関わらず、境界面の運動は断続的となる。 繰り返し測定に対して停止位置が結晶内で再現することから、境界面の運動の断続性に結晶内部の欠陥のような結晶の不完全性が関連している。 2 同じ領域での繰り返し測定を行った結果、境界面の速度は通過する場所によっておおきくことなり、しかもその平均的な運動速度は運動の繰返し毎に大きく異なる。この運動の様子については以下の特徴を見出した。 (1)運動速度は結晶内の場所によって大きく異なるが、各測定における平均速度によって速度の場所依存性を規格化すると、運動速度の場所依存性は一つのカーブにスケーリングできる。これより、運動速度は結晶内に内在する欠陥等の不完全性の分布に支配されている。 (2)繰返し運動毎の平均速度を繰返し順にならべると、運動による結晶の疲労等の影響によるものではなく、ある応力範囲では乱雑および周期的というよりはカオス的な振る舞いを示す部分も見られた。 これらの結果をもとに、実験的には低温に温度を下げたときの運動の観察、非常に精密に運動を制御したときの精密実験、モデルを構築して計算シュミレーションをすすめる。
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