研究概要 |
本研究は,真の薄膜付着強度の尺度を定義し,同時に超音波を用いた薄膜付着強度の定量的非破壊評価手法を確立することを目的とするものである。本年度は,以下の項目に関する研究を行った。 1.微視機構の操作による薄膜付着強度の尺度の検討 プラズマ気相合成法による基板上へのダイヤモンド形成を行い,電子顕微鏡を用いて核発生・成長プロセスの解析を行った。これにより基板上に孤独に発生した核が成長し互いに連結して膜になる過程を確認するとともに,新たに電子顕微鏡内において単独核の破壊試験を行うことにより,核の基盤への付着力を評価することに成功した。また同時に,異なる基盤の処理方法による核発生密度の変化を把握し,薄膜の付着強度の尺度を複数核の基盤への付着力に準拠したものとして明確化するための検討を行った。 2.斜入射超音波透過特性に関する実験・理論 ダイヤモンド薄膜と窒化ケイ素基板からなる試験片を用いて,斜めに入射させた超音波の透過波形の計測を行った。得られた波形を用いて周波数解析を行った結果,探触子の中心周波数付近での透過率の極大値は,付着状態が良くなるに従い増加することがわかった。次にこの結果を踏まえ,薄膜と基板の界面における境界条件として,せん断応力の連続性を仮定した場合とせん断応力を零とした場合の二つの理論モデルにおける透過率の計算を行った。実験値と計算値を比較することにより,界面におけるせん断応力の伝達特性の違いが中心周波数付近の透過率の極大値に影響を与えることが明確となり,斜入射超音波透過特性を計測する本手法が,薄膜の付着状態を定量的に評価するものであることを検証した。
|