研究概要 |
本研究は,薄膜付着の微視機構の把握に基づいて真の付着強度の尺度を定義し,同時に薄膜付着強度の定量的評価のための学術的基礎を確立することを目的とするものである。本年度は昨年度の研究成果を踏まえ,以下の項目に関する研究を行った。 1.簡易破壊試験と本尺度との関係の検討 プラズマ気相合成法により基板上に作製した既知の核発生密度を有するダイヤモンド薄幕に対し,ビッカース圧子を押込むことによるはく離破壊試験を行った。押込み時の荷重一変位曲線より得られる散逸エネルギから基板の塑性変形に要したエネルギを除去し,薄膜のはく離進展に伴って解放されたエネルギを実験的に算出した。この結果と昨年度に実施した単独核の破壊試験の結果とを比較し,複数の核により基板に付着する薄膜の付着強度を,ビッカース試験により定量的に評価する手順の検討を行った。 2.破壊試験との比較による定量的非破壊評価の検証と確立 上記破壊試験から得られた薄膜の付着強度を,昨年度に実施した斜入射超音波透過特性に基づく付着状態の評価結果と比較し,核の微視付着力に準拠した薄幕の付着強度を非破壊定量評価する手法の検討を行った。さらに,化学結合の電子軌道状態を取り扱う第一原理分子動力学を新たに導入して,先に提案した単独核の基板と結合のモデルを発展させ,基板表面の点欠陥においてのみダイヤモンドが基板と共有結合し,これ以外では結合しないことを確認して界面での超音波透過特性との関連を調査し,本研究で提案する評価原理の検証を行った。
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