板材や薄肉構造物が大きな塑性変形を受けて破壊するとき、一般に不安定な変形挙動がそれに先行する。薄板の単純引張りでは、最大荷重付近で幅方向にくびれが生じ、その後くびれが集中し、せん断帯と呼ばれる筋状の板厚減少域が現れる。このせん断帯が材料に生じると耐荷能力は著しく減少し、ほどなく破断・崩壊に至る。このせん断帯は、マクロな板材だけでなく、ミクロな結晶粒や複合材料の粒子間や繊維間などの微視組織中でも発生し、材料の破壊・変形強度を支配している。せん断帯のひずみの局所化はひずみ勾配にも依存し、用いる試験片の寸法効果を引き起こす。すなわち、無次元量に変換した荷重一変位曲線等が用いる試験片の大きさに依存する寸法硬化が観察される。 本年度は、結晶材料を対象としてせん断帯が破壊強度と変形能の寸法硬化に及ぼす影響を、実験的に明らかにした。寸法を相似に変えた試験片や、幅・板圧比を変えた試験片を作成し、引張荷重を加え応力・ひずみ関係を計測し、最大応力は試験片サイズが小さくなるほど上昇する寸法効果を確認した。また圧縮荷重に対しても、同様に寸法を相似に変えた試験片を作成し、応力・ひずみ関係を計測した。また平面ひずみ圧縮治具を作成し、平面ひずみ圧縮では、拘束がない自由圧縮に比べ応力が上昇することも確認した。実験だけでなく、内部構造の変化を考慮した塑性構成式による3次元有限要素解析を行ったほか、ボロノイ分割を用いた平面結晶モデルによる応答解析から、結晶粒径のせん断帯に及ぼす影響を明らかにしている。
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