研究概要 |
本研究では,広帯域広開口角圧電高分子膜超音波センサーとデジタル超音波装置を用いて,水浸法により漏洩レーリー波,クリーピング波,表面SV波信号を収録し,それらの伝播速度及び減衰を時間領域で高精度測定するシステムを構築し,表面層の材料特性,疲労の進行に伴う表面微視き裂,さらに表面層の応力を非破壊的に測定する方法を確立することを目的とした.平成9年度の研究で得られた主な結果を以下に示す. (1)ステンレス鋼の片振疲労試験過程において,漏洩表レーリー波伝播速度及び表面波振幅を測定し,負荷繰り返し数の増大に伴い負荷方向に直角に発生する微小き裂数の増大により,高周波域での漏洩レーリー波振幅が低下することを確認した. (2)表面に窒化チタニウム薄膜コーティングした炭化タングステンの漏洩レーリー波速度分散を測定し,2層構造を伝播する波動理論を用いて薄膜の弾性係数を推定した. (3)漏洩レーリー波,クリーピング波,表面SV波速度及び漏洩レーリー波の減衰を用いて,溶融石英・アルミニウム合金の表面層の密度を10%以内の誤差で推定した. (4)高周波超音波顕微鏡と広帯域広開口角圧電高分子膜超音波センサーを用いる方法を併用して,窒化珪素セラミックスの漏洩レーリー波速度が周波数が高いほど大きいことを明らかにし,25μm程度の表面層の剛性率が12%ほど内部より高いことを明らかにした. (5)有限要素法を用いて,線集束超音波センサーで励起された各種表面波の伝播シミュレーションを行い,漏洩レーリー波速度及び減衰,さらにクリーピング波速度は2%以内で測定値と一致することを確かめた.
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