研究概要 |
本研究において得られた成果は下記の通りである。 (1)単結晶体の線膨張係数および弾性係数を求めるための分子動力学法解析コードを作成し、α・Feについてこれらの値をある程度の温度域まで求めることに成功した。しかし、高温域では熱振動が大きくなり安定した解が得られなかった。融点近くの高温域での値が得られるようにすることは今後の課題として残された)。 (2)Si,GaAs,InP等の半導体バルク単結晶育成過程の転位密度を求めるための有限要素法解析コードを、高温での単結晶体の構成式としてHaasen-Suminoモデルを用いて作成し、解析コードの検証のために例題を解いた。その結果、GaAs、InPについてはバルク単結晶体断面内の直径方向転位密度分布としてW型の分布が得られた。これは、実際の単結晶引き上げにも見られる分布形状である。また転位密度量のオーダーも実際の引き上げとかけ離れたものでなかった。したがって、ここで開発した解析コードは単結晶の高品位育成条件探索のための有力なツールとなりうることがわかった。 (3)実際の8インチ・シリコン単結晶のCZ育成においては無転位の単結晶が引き上げられている。このような実際の現象に適合するようなシリコン単結晶体の融点近傍のヤングを推定した。その結果、臨界分解せん断応力の実験データから求めたヤング率を用いた場合に8インチ単結晶は無転位で育成できるという結果が得られた。したがって、16インチのような超大口径シリコン単結晶育成過程の転位密評価にもこのようなヤング率を用いるべきであることが推奨された。
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