本研究の目的は、機械構成部品の持つ加工誤差が、製品機能要求より設定される機械組立品の運動機能精度に及ぼす影響を解析するための計算機支援によるモデリング手法を確立することである。このために、昨年度には、機械加工の種類による加工形状誤差の系統的な分類を行い、計算機支援の形状モデリングの手法を援用して、本来の機械部品形状に加工誤差形状を重ね合わせて、誤差付きの部品形状表現を可能とした。更に、物体間の干渉・接触検出に基づき、機械組立品の運動挙動解析を行う手法を研究した。本年度は、運動解析手法を剛体および柔軟物体を対象として拡張し、シミュレーションソフトウェアを実装して評価を行った。剛体に対する運動解析手法においては、剛体間の衝突・接触検出法を拡張して種々の不静定な場合にも対応できるようにし、また剛体間にスライドやリンクなどの拘束関係が与えられている場合も含めて、一般的な動力学解析が効率よく頑健に実行できるようにした。種々の形状誤差にたいする感度解析を行い、運動機能に対する形状誤差の影響を評価した。柔軟物体については、各種の基本的機構要素を組み込み、また任意の要素を定義できる機能を有する、汎用の有限要素法に基づく数値的動力学解析ソフトウェアを利用して、加工誤差やその他の機構誤差をモデル化した機構要素を作成し、特に、長時間運用による、機構の経時劣化を評価した。評価対象として、複写機機構を取り上げ、加工誤差や磨耗変形による軸受偏心や面ねじれなどの影響を解析した。加工誤差をはじめとする形状誤差を運動機能解析の観点から統合的に評価する手法を確立できた。
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