研究課題/領域番号 |
08455075
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
稲村 豊四郎 名古屋工業大学, 工学部, 教授 (60107539)
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研究分担者 |
武澤 伸浩 名古屋工業大学, 工学部, 助手 (50236452)
島田 尚一 大阪大学, 工学部, 助教授 (20029317)
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キーワード | 分子動力学 / シミュレーション / 繰り込み / 切削 / ぜい性延性遷移 |
研究概要 |
本年度に得られた成果は以下の通りである。 1.逆繰り込み変換分子動力学の基礎式を拘束条件付のニュートンの運動方程式として定式化し、これにもとづくプログラムを開発中である。 2.逆繰り込み変換分子動力学は、繰り込み変換分子動力学の結果の下で想定される多様な初期状態に対し、その詳細な時間発展を追跡するものであるから、追跡精度が初期条件自身に依存してはならない。この観点から、分子動力学で一般に用いられる5種類の数値計算法の精度、初期条件依存性の比較検討を行なった。その結果、ここの粒子の運動に関して初期条件依存性や数値計算法による違いはあるが、温度や応力、ひずみなど粒子集団の挙動によって定義される物理量については有意差がないことが判明した。 3.超微小硬度計によるSi単結晶の押し込み試験を、ポリシング面、油塗布ポリシング面及びH_2O_2腐食ポリシング面に対し行なった。その結果、油塗布によるSi表面での雰囲気分子の遮断効果及び潤滑効果により、Siの破壊強度が増し、H_2O_2腐食による塑性変形(アモルファス化)の促進とそれによる弾性ひずみエネルギーの開放によっても破壊強度の増加が認められた。以上の結果より、Siの破壊は、雰囲気分子との化学反応生成熱が引金となって材料中に蓄えられる弾性ひずみエネルギーが一挙に開放され起こるとする考えが支持された。 4.上記3の考えをふまえ、雰囲気分子との反応を考慮したSiとCuの切削シミュレーションを繰り込み変換分子動力学により行なった。その結果、Siについては切込みに依存して脆性延性遷移現象が現れ、Cuの場合は常に延性切削モードとなった。この結果は広く知られた実験事実を再現するものであり、このことからも上記3の破壊メカニズムの妥当性が確認された。
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