本研究は、熱的非平衡・非定常状態における動的挙動を解明し、高速能動伝熱制御の実現を目指すもので、本年度は以下の研究成果を得た。 (1)従来とは異なる観点から、新しい非平衡熱電素子の基礎理論を構築し、それに基づいた数値解析を行った。非平衡状態の熱電素子理論では従来の平衡物性として用いられているトムソン係数が使用できないことが明らかとなった。 (2)本理論に基づいて非平行熱電素子の冷却性能を評価した結果、フロンの核沸騰熱伝達に相当する冷却熱流束が得られることが明らかとなった。またその時、熱電素子に流す電流は定常運転で用いられる電流に比べて著しく大きいものであった。 (3)コンピュータシステムと連動した能動温度制御機構を構築し、現有の位相シフト光干渉計で温度場の非接触その場観察を行った。能動温度制御機構は、非常に良好に作動し、高精度な温度制御と急激な温度変化を同時に行うことが出来ることが明らかとなった。このシステムを用いて、結晶周りの溶液の二重拡散場その場観察を行った。本実験で用いた温度制御機構は、各種の温度制御実験にも応用可能であることが実証された。 (4)上記理論と急速冷却実験の結果を比較し、良好な一致を見た。この時の非平衡熱電素子内の温度変化は、通常用いられる熱電素子のものとは大きく異なることが明らかとなった。 以上纏めると、本年度の研究目標はほぼ達成された。
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