研究概要 |
本研究は,燃焼学的に未開拓な高圧乱流燃焼に対して,4.0MPaまでの一定圧力・高圧雰囲気中に保炎された乱流予混合火炎を研究対象とし,(1)高圧下の乱流火炎構造の詳細な観察,(2)乱れ強さ・乱流スケール等への圧力の影響と火炎構造との関係の解明,(3)乱流燃焼速度に対する圧力の影響を明らかにすることを目的とする. 本年度は,出口部に乱れ発生用多孔板を内蔵したノズルバ-ナを製作した.開口比を50%とした数種類の穴径の円板を製作した.弱い乱れを発生するためメッシュを円形に切断したものも用いた. これらに対して,熱線風速計を用いて,大気圧および3.0MPaまでの高圧下で,乱流特性の測定を行った.その結果,いずれの乱れ発生板においても,平均流速の増大と共に乱れ強さは増大するが,大気圧下では平均流速の小さい領域で乱れ強さの増大が穏やかとなった.これは,大気圧下では乱れの減衰が激しいためである.一方,高圧下では,平均流速のほぼ全域で乱れ強さは直線的に増大した. バ-ナ下流方向への乱れの減衰に対する圧力の影響を調べるため,バ-ナ出口部に延長筒を取り付け,減衰の程度を表すパラメータである(U/u')^2/(U_0/u'_0)^2の下流方向への分布を測定した.その結果,いずれの圧力において(U/u')^2/(U_0/u'_0)^2は下流に向かって直線的に増大するが,その勾配は圧力が小さいほど大きい,すなわち減衰が激しいことがわかった.圧力が増大すると(U/u')^2/(U_0/u'_0)^2の勾配は小さくなるが,1.0MPaより高い圧力ではほぼ一定となることがわかった.このことは,大気圧環境における乱れの減衰が非常に大きいことを意味している. 火炎安定試験は,メタン-空気火炎に対しては,3.0MPaまで,エチレン-空気火炎は1.0MPaまで,プロパン-空気火炎は0.5MPaまでの圧力で行った.その結果,メタン火炎では,逆火せず実験可能な当量比として0.9以下,エチレン火炎では0.7以下,プロパン火炎では0.9以下が適当であると判断された.
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