研究概要 |
本年度は,昨年度行われた高圧下の乱流特性および火炎安定範囲に関する計測結果を踏まえ,高圧容器内に安定化されたブンゼン型乱流予混合火炎に対して火炎観察を行うことに,CCDカメラを用いたレーザートモグラフィーと画像解析によって乱流燃焼速度の測定を行った.容器内最大圧力は,3.oMPaまで実験に成功した.混合気として,メタン-空気,エチレン-空気,プロパン-空気混合気を用いた.その結果,以下のような知見を得た. 1)高圧下では火炎構造では微細化・複雑化した.また,火炎ブラシの広い範囲で火炎が引きちぎられる様子が観測された. 2)高圧下では,乱れの弱い領域(u'S_L<1)においてS_T/S_LはU'/S_Lとともに急激に増大し,3.0MPaのメタン火炎ではS_T/S_Lは最大30まで増大することが確認された.高圧下においては,乱れの特に弱い領域でのS_T/S_Lの増大が著しく,これは火炎の流体力学的不安定性の効果が高圧下で激しくなることが原因といえる. 3)高圧下におけるS_T/S_Lの増大率はプロパン火炎の方が,メタン火炎およびエチレン火炎よりも小さいことが明らかとなった.これは,高圧における流体力学的不安定性による火炎面積の増大が,プロパン-空気混合気では大きなルイス数による熱・物質拡散相互作用によって抑制されるためと考えられる. 4)乱れ強さの広い範囲において,エチレン火炎に対するS_T/S_Lとu'/S_Lの関係はメタン火炎とほとんど一致する.一方,プロパン火炎のS_T/S_Lはエチレン火炎およびメタン火炎に比較して小さいことが明らかとなった. 5)これまでに提案されている S_T/S_L,U'/S_Lおよび乱流レイノズル数R_Lに関する一般関係が高圧火炎に適用できるかを検討した結果,Abde1-Gayedら(1987)の一般関係と傾向は一致するが,本実験結果のS_T/S_Lはそれより大きい値を示した.また,乱れの強い領域(U'/S_L>1.0)におけるS_<T.>/S_LにはR_Lに関する1/4乗則が見られ,これはGouldin(1987)によるフラクタル理論に基づく乱流燃焼モデルと一致する. 6)本実験結果をu'/S_Lの全域で最も適切に表すことができる一般関係式は,S_T/S_L∝[P/P_o)(u'/S_L)]^nであり,その指数nは0.4に近いことが明らかとなった.
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