研究概要 |
宇宙は,極低温,超高真空,無重力,太陽光照射などと特殊な環境である。宇宙線,宇宙基地の熱設計には,このような特殊な環境下の熱機能材料の熱物性データが不可欠である。少なくとも室温プラス,マイナス100Kの広い温度範囲の熱物性データが必要であるが,熱機能材料はもちろん,純金属でも低温データは僅かしかないのが熱物性データベースの構築が望まれる由縁である。 本研究の主な目的は,低温域における熱機能材料の比熱データの収集である。熱機能材料に各種の熱電対用合金を,また標準物質候補として貴金属を選び,それらの比熱を液体窒素沸点(77.4K)から少なくとも室温付近まで測定することである。 今年度に実施した研究は,主に購入した低温型示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter)の性能検討である。購入したDSCの温度校正を液体窒素沸点(77.4K)から室温付近まで行った。高純度インジウムなどの融点で熱量測定し,DSCの装置定数を決定した。その際に,DSC操作の最適条件を検討した。特に,試料の加熱・冷却速度,測定部のヘリウム・ガスによるバ-ジ,DSCの予冷時間と熱的安定性,などの影響を詳しく調べた。また従来から使用している高温型示差走査熱量計の性能と比較,検討した。 その結果, 1,温度補償型であるこのDSCは,熱流束型DSCに比較して試料加熱・冷却応答が非常に速いこと, 2,応答が速く,短時間測定が可能なことから,熱機能材料の機能性検出に好適なこと, 3,ヘリウムガス・バ-ジで酸化問題が解消し,熱影響を受け易い物質の測定が可能なこと, 4,試料の必要量が数mgで十分であることから,少量しか試作できない新材料でも測定できること, 5,測定部の液体窒素に浸漬していることから,DSC予冷は短時間で済み,熱的安定性は良好なこと,などが分かった。 次年度は,液体窒素沸点(77.4K)から室温付近までの温度範囲で,熱機能材料の比熱データを収集する。
|