本研究においては、申請書に記したように、管内に封入された液体の管軸方向振動を利用して熱を効率的に輸送する熱輸送デバイスについて、液体の相変化を用いずに外部から強制振動される単相強制系と封入液体の相変化自体を駆動源とする二相自励系とを取り上げた。 単相強制系に関しては、まず管に熱が出入りする加熱・冷却部を含む総括熱抵抗の評価が問題であった。これについては、層流振動流における計算結果を基に熱伝達率に関する合理的整理式を提案し、それに基づく総括熱抵抗モデルを構築するとともに、この総括熱抵抗モデルが設計上十分に機能することを示した。次の問題は、熱輸送量を増大するために振動流振幅や周波数を増大した場合に予想される層流状態の崩壊が熱輸送限界をもたらさないかであった。この問題については、実験により層流崩壊条件を検証するとともに、熱輸送実験により層流振動流の崩壊が逆に実効熱伝導率を増大させることを発見し、これを第一次近似モデルにより説明した。以上により、単相強制系については性能のほぼ全容が明らかにされたので、マイクロ化の試みとして間隔0.2mmの平行平板間流路を有する強制系について熱輸送量と駆動エネルギーとの比を計算し、この比が5以上程度の範囲で許容できる場合にはマイクロ化が可能であることを示した。 次に二相自励系については、観察の容易なガラス管に水を一定の封入率で封入した実験装置を作成し、現象を観察した。この結果、ボトムヒートモードでは広い封入率において液体に自励的振動が現れること、これにより銅の10倍程度の実効熱伝導率が得られることなどを示した。
|