研究概要 |
本研究においては,マイクロカプセル水溶液を用いた蓄熱及び熱輸送システムの開発を最終目的とし,その基礎資料となる,1.熱物性値,2.蓄熱特性および3.管内搬送特性について検討を行った. 1.熱物性値 マイクロカプセル水溶液の密度,比熱,潜熱,熱伝導率,粘性の測定を行った.その結果,密度,比熱および潜熱に関しては,組成材料の質量割合から推算できることを示した.また,熱伝導率に関しては,Euckenの3相分散モデルにより予測可能であることが判明した.さらに,非ニュートン挙動を示すマイクロカプセル水溶液の粘性に関しては,べき乗法則を適用して評価を行い,擬塑性粘度および構造粘度指数を温度および質量割合の関数として表した. 2.蓄熱特性 マイクロカプセル化潜熱物質混合水層の下方より微細な空気泡を流入させ,直接接触式熱交換法による蓄熱特性の検討を行い,蓄熱特性に及ぼす空気流速,空気温度,液相高さの影響について検討した.その結果,空気流速が大きい条件においては,空気泡の合体が生じて有効な伝熱面積が減少するために,蓄熱特性の低下することが判明した.また,蓄熱完了時間に関する無次元整理式の提案を行った. 3.搬送特性 マイクロカプセル化潜熱物質混合水の,直円管における流動抵抗特性を測定した.その結果,マイクロカプセル化潜熱物質混合水の管内圧力損失は,潜熱物質の質量割合の増加と共に増大することを明らかにした.また,マイクロカプセル化潜熱物質混合水を熱輸送媒体とした場合には,水を用いた場合に比較して配管直径の縮小が可能な反面,ポンプ動力は増大することが判明した.このため,配管直径の減少に伴うイニシャルコストの縮小と,ポンプ動力の増大によるランニングコストの増大との兼ね合いより,最適な条件を見出す必要があることを明らかにした.
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