研究概要 |
開発したマニピュレータを実作業へ適用するためのシステム設計,および評価実験を中心に研究を展開した.実施した項目を以下に示す. 1.マニピュレータに多指ハンドを装着して作業を行わせるために,ハードウェアの改良・性能向上を行った.具体的には,肩・肘部MIA関節を再設計し,関節のトルク・重量比を肩部で20%,肘部で16%向上した.この結果,可搬重量および動作速度は,最悪姿勢で手先荷重2.5kg,手先速度1.0m/secとなり,物体を多指ハンドで把持した状態で高速動作が可能となった. 2.人間とのインタラクションを作業内容を含むマニピュレーションを実現するために,状態遷移ネットワークの概念を利用した運動制御用オペレーティングシステムを構築した.このシステムを用いることで,複雑な拘束条件や状況変化に適応した運動が記述可能となった. 3.高速,かつ高精度な動作を実現するために,多自由度MIAマニピュレータの動力学モデルを構築し,リャプノフ安定解析を行った.この結果,ダンピング調節を用いることでMIAマニピュレータが安定に制御可能であることを明らかにした.また,人間との協調作業時の衝突安全性確保に注目し,緩衝カバー設計論と関節制御則(状況に応じた関節コンプライアンスと緊急停止の切り替え)を含む2重構造安全対策を導出した. 4.導出した制御則を用いて実際にシステムを制御するために,粘弾性調節系の動特性分析,リンクパラメータの同定を行った.また,MIAアームに多指ハンドを装着し,人間共存ヒューマノイドHadaly-2の手・腕部サブシステムを構成した.このシステムを用いて,未知形状物の包絡および人間への手渡しなどの実作業を行い,未知拘束条件下での力制御に対する有効性の評価を行った.実験結果から,位置・力ともに正確な追従運動が確認され,本研究の有効性が示された.
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