1.定態安定度解析の階層分散化のための基礎的な研究として、部分系統と全体系統の動的な関係をどのように評価したらよいかについて検討を行なった。まず、全系の大域的動揺モードに寄与の大きい部分系統の動揺モードを判別するために、部分系統の動揺モードの局所性の評価指標を提案し、その有効性を数値例を用いて示した。次に、全系の大域的動揺モードと部分系統の動揺モードとの関係を、低次元化モデルに基づいて評価する手法を提案し、数値例を用いてその有効性を示した。 2.前節で提案した定態安定度評価の階層分散化が、可変直列コンデンサなどが設置された可変インピーダンス型電力システム(VIPS)においても適用できるか検討を行い、可変直列コンデンサなどのVIPS機器が部分系統間を非干渉化するように適切に制御されているならば、従来の系統で行われる評価より部分系統での評価が正しく行われ、よって全系で行う大域的動揺モードの評価も正しく行うことができることがわかった。 3.しかしながら、この研究過程において、提案された局所性のみに注目した低次元化モデルを作成すると、正しく大域的動揺モードが生成されない場合があることがわかったので、部分系統での評価で得られた動揺モードや状態変数の大域的動揺モードに対しての寄与の大きさを、寄与率行列に基づき考慮し、局所的な動揺モードや状態変数の選択を行い、低次元化モデルを作成する評価改善手法を示した。そして、数値例により、従来の手法よりもよい精度で低次元化モデルによる大域的動揺モードの評価が行えることがわかった。 4.定態安定度向上制御として、固有値制御を取り上げ、局所的モードの安定化を部分系統レベルで、大域的モードの安定化を全系レベルで行うことにより、固有値制御を階層分散化するアルゴリズムを提案した。
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