将来の電力需要の増大及び高信頼度な電力供給への要求に対処するため、電力システムはますます大規模・高度化することが予想されるので、このような電力システムに対しては、階層分散化された監視・制御構造に適した効率的な高度セキュリティ監視・制御システムの開発が必要である。このセキュリティの一つとして定態安定度をとりあげ、効率的にこの解析・監視・制御を行うための階層分散型定態安定度評価手法つまり固有値解析計算手法の提案を行い、それに適した大規模系統分割手法の開発を行った。 本提案システムでは、昨年度に提案した系統動揺モードの局所性の指標(LIR)を用いて、系統の固有値を部分系統内の局所的動揺と部分系統間の大域的動揺に分けて効率的に解析・監視をするのであるが、本研究では、大規模系統をこのいくつかの部分系統へ分割する手法として、シミュレーテッド・アニーリング(焼き鈍し)法という進化的最適化手法を用いており、各部分系統内で、各固有値の局所性指標(LIR)の値の大小が明確に識別できるような分割を目的とした。また、階層分散化による安定度評価は、各部分系統ごとの評価を各部分系統に割り当てられたプロセッサで並列計算することを考慮し、発電機数が各部分系統にできるだけ均等に配分することも目的に加えた。 モデル系統で計算した結果、ある程度の精度を保ちつつ、定態安定度が効率的に評価することのできる系統分割を得ることができた。
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