研究概要 |
本研究では、酸化物系バルク超電導体と鉄などの軟磁性体だけから基本的に構成される磁気勾配浮上方式に関して、浮上力特性、特に安定浮上が得られる変位範囲、およびその各種パラメータ依存性を数値電磁界解析により整理し、さらにそれらの結果を小型実験装置により検証し、この浮上方式のシステム応用可能性と課題を明らかにすることを目的とし,平成8年度は以下のような成果が得られた。 (l)数値電磁界解析による浮上特性の解析:磁気勾配浮上方式におけるバルク超電導体と鉄レールの幾何学的な配置と浮上特性の関係を詳細に解析した。特にバルク超電導体の臨界電流密度-磁界特性が浮上力特性に与える影響を解析し,安定浮上に必要な臨界電流密度を明らかにした。 (2)バルク超電導体と鉄レール間の電磁力測定装置および磁束密度分布測定装置の設計・製作:磁気勾配浮上方式の浮上特性を評価するために、浮上実験自体を行うのではなく、バルク超電導体と鉄レールを、様々な幾何学的な位置関係に設定して、それらの間に働く電磁力を測定する目的で、低温容器,ロードセルや可動架台などからなる電磁力測定システムを設計・製作した。また,バルク超電導体表面の磁束密度分布を測定する装置についても設計・製作した。 (3)永久磁石型Mixed-μ浮上系の電磁力特性の測定:広義の磁気勾配浮上方式のグループに分類できる永久磁石型Mixed-μ浮上系に関して,上記の電磁力測定装置を用いて永久磁石・超電導体と鉄レール間に働く電磁力を測定し,超電導体がない場合には不安定な特性であったものが,超電導体を挿入することによって安定化され,復元力が得られることが確認できた。また,上下左右の変位に関する安定領域を測定したところ,設定した浮上系においては現状のバルク超電導体の特性では,理想的な超電導体を仮定した数値解析から得られた電磁力を大きく下回り,安定領域も狭いことが明らかになった。
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