研究概要 |
薄膜EL素子が優れた画像品質を示すとともに,全固体型という特徴を有していることから,超微細加工が可能であり,従って,EL素子の集積化による超高精細化が期待される。本研究では,申請者らが既にp-Si基板上に形成したホットエレクトロン注入型薄膜EL素子により駆動電圧の低減化が達成されることを実現しており,このことを利用して,同一Si基板上に発光素子部と駆動回路部とを集積化することを試みた。この集積型EL素子の作製にあたって,まず素子設計を行った上で,申請書の研究計画に従って作製・評価を行った。 駆動回路として用いるd-MOSFETをSi基板上に形成し,ドレイン部分にSiO_2を介してホットエレクトロン注入型ZnS:Mn薄膜EL素子を作製し,緒特性を評価した。このEL素子は1kHz,110Vの印加電圧で150cd/m^2の輝度が得られ,ゲート電圧をオン-オフすることによって約6,5cd/m^2の輝度の制御が達成された。 一方,近年10V前後の直流駆動で高輝度を示し,フルカラー化も期待される有機薄膜ELが注目を集めている。しかし,有機薄膜は耐熱性や耐薬品性が劣ることから,高温及びウエットプロセスが不可能である。これに対して,本研究の原理から,MOSFET上に有機EL素子を集積化することにより,上述のプロセスを必要とすることなく高精細画像を達成することができると期待される。そこで,本研究において,基礎的研究としてSi基板上への有機EL素子の作製を試み,Al/Alq_3/TPD/p-Si構造で約66cd/m^2の輝度を得ることができた。 以上,本研究により,集積化されたホットエレクトロン注入型無機EL素子においてゲート電圧による発光の制御に成功し,集積化された超高精細ELディスプレイ実現への展望が得られた。また,有機薄膜ELディスプレイの集積化に対しても本研究が有効であることが示されたので,今後更に研究を展開していきたい。
|