極薄SiO_2/Si界面の欠陥準位密度を高感度に定量評価する技術の確立を目指して、光電子収率分光(PYS)システムを構築し、高感度化を図ると共に、その実質的検出限界を実験的に明らかにした。具体的には、独自に構築した光電子収率分光システムとケルビンプローブ測定系を既存の単色X線・紫外線光電子分光(XPS/UPS)システムの分析チャンバーに接続し、試料のフェルミ準位エネルギー位置をmeVの精度で決定できるようにした。以下に主要な研究成果をまとめる。 1.c-Si及びSiO_2/c-Si系の試料に対し、表面近傍(10nm)以下の電子占有状態を約8桁のダイナミックレンジで評価可能なPYSシステムの構築に成功した。 2.光電子収率及びその1/3乗を入射光エネルギーの関数としてプロットすることで、光電子の直接励起および間接励起のしきいエネルギーを決定することができ、表面バンドの曲がりにほとんど依存されることなく価電子帯上端のエネルギー位置を決定できることが明らかになった。これは、基板不純物濃度にも関係なく成立する。 3.SiO_2/c-Si系からのPYS測定において、Siの価電子帯からの光電子収率の低下量から、SiO_2膜に対する光電子脱出深さを決定できる。入射光エネルギー5.6eVにおいて、光電子脱出深さは約3.1nmと見積もられた。 4.XPS価電子帯スペクトルに対応させて、Si価電子帯からの実測光電子収率を考慮することで、微分PYSスペクトルから表面および界面状態密度分布が1x10^<10>cm^<-2>eV^<-1>で定量可能である。 5.熱酸化膜形成直後のSiO_2(厚さ2.7nm)/n^+Si(100)において、禁制帯中央付近に〜3x10^<12>cm^<-2>eV^<-1>の界面準位密度が存在し、水素雰囲気中400℃熱処理(ゲート電極なし)により約一桁低減される。
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