研究課題/領域番号 |
08455152
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研究機関 | 理化学研究所 |
研究代表者 |
青柳 克信 理化学研究所, 半導体工学研究室, 主任研究員 (70087469)
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研究分担者 |
蓮見 真彦 東京農工大学, 工学部, 助手 (60261153)
野村 晋太郎 理化学研究所, 半導体工学研究室, 研究員 (90271527)
趙 新為 理化学研究所, ナノ電子材料研究チーム, フロンティア研究員 (50260211)
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キーワード | ナノ微結晶Si / 青色発光 / 量子サイズ効果 / レーザー |
研究概要 |
数nmのSi結晶では量子サイズ効果により電子のエネルギーか離散的になり、直接遷移や可視光発光が期待される。本研究はこのようなSiの量子ドットで構築される新しい半導体材料--ナノ微結晶Si(nc-Si)を開発し、その光学的、電気的特性を評価し、新しい光電子デバイスを実現する。本研究では既に、平均結晶粒径は5nm以下のnc-Si薄膜を製作し、世界ではじめて紫外から青色の強い発光を室温で観測した。本年度はnc-Siを用いた新しい発光素子の実現を目指し、下記の研究成果を得た。 (1)ナノ微結晶Si薄膜の作製と微結晶のサイズ制御--本研究では、高純度a-Si薄膜の中にErを添加し、Er-を結晶の核にしてnc-Si材料を作製するプロセスを開発した。この方法ではErの添加濃度を制御することによりSi微結晶のサイズが制御できる。本研究では、結晶サイズ2.7nmから15nmまでの試料を制御性良く製作した。10nm以下の試料では、室温の青色発光とErの発光が観測されている。 (2)ナノ微結晶Si発光の結晶サイズ依存性--nc-Siからの青色発光は結晶サイズの減少に従いブルーシフトするが、そのシフト量が水素終端のSiドットの理論計算値より少なく、結晶サイズが10nm-でも発光が観測されている。nc-Siは結晶相とa-Si相が混在する系であり、結晶相に電子の共鳴状態が形成されることにより直接遷移が可能になる。この結果はSiナノ微結晶中の量子サイズ効果を示す最初のものである。 (3)Siナノ微結晶内の量子サイズ効果の理論解析--nc-Si材料は微結晶とa-Si相が混在する系であり、量子サイズ効果により、結晶相に電子の共鳴状態ができる。これらの共鳴状態間の遷移が青色発光の起源である。今までの理論計算はSiナノ微結晶のような系では有効性を失う。本研究では新しい計算法を開発し、nc-Si材料の電子状態を明らかにした。 (4)Si自己形成ドットと細線の作製と再配列--本研究では、Si基板上にSiの自己形成ドットや細線を作製し、原子力顕微鏡を用いて、それらを再移動することに成功した。 (5)ナノ微結晶Si材料を用いた発光素子の試作--本研究では、nc-Si材料の光学特性と電気的特性を評価したとともに、nc-Si:Erを用いた光導波路をSiの基板上に作製し、光励起により世界ではじめて室温までのレーザー発振を実現した。また、ダイオードを製作し、1.54μm近辺に電流注入による発光が観測された。
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