「フッ化物の電子線励起反応」と「自己形成量子ドットの歪・組成制御」の2つについて研究を行った。 ヘリウム希釈の5%フッ素を原料としてECRプラズマを生成し、それをGaAsあるいはInPの上に照射するとフッ化ガリウムあるいはフッ化インジウムができる。基板温度(室温-400°C)でのプラズマの照射2時間で形成されるフッ化ガリウムの厚さは20-40nmである。これに電子線を照射すると明瞭な照射痕跡が認められ、照射部分のみが削られたようになる。20kVの電子線照射量6.6x10^<17>electron/cm^2で約20nmのフッ化ガリウムが分解される。電子線による分解反応での生成物は現在の所明かではないが、金属ガリウムあるいは金属インジウムである可能性が大きい。また、プラズマで形成したフッ化ガリウムは580-600°Cへの昇温によっても分解反応を起こし、表面からほぼ完全に脱離する。従って電子線照射と昇温脱離を組み合わせることによって微小なガリウム砒素あるいはインジウム砒素のドットが形成できると期待される。 自己形成量子ドットの歪・組成制御の実験では、量子ドットの形成後その場で砒素照射を燐照射に切り換えることにより量子ドットを平坦な膜に変化させうること、その変化は可逆的でふたたび砒素照射に切り換えると量子ドットが再形成されることがわかった。さらにその変化の途中の状態は照射する砒素と燐の比を制御することによって準安定にできる。この現象は基本的に量子ドットのなかの砒素原子が燐原子によって置き換えられるために組成すなわち歪量が変化し、そのためにドット構造そのものが変化するというメカニズムで理解できる。
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