研究概要 |
申請備品のRF電源を購入することにより,現有のRFスパッタ装置を三源同時スパッタ方式に変換し,真空を破ることなく4層膜を作製することを可能にした.本年度は,この装置を用いることにより,ピン止め効果およびサンドイッチ膜の巨大磁気抵抗効果(GMR)の熱的安定性を明らかにした. i)ピン止め効果:反強磁性層としてネ-ル点が高く,耐食性に優れたMnPt膜に注目し,そのスパッタ膜の結晶構造とピン止め効果を評価した.Ptディスク上にMnチップを配置した複合ターゲットを用い,Mnチップ数を変えることにより組成制御を行った.ターゲットのMn面積比が42-46%のとき(111)面が膜面に平行に配向したfct結晶構造のものが形成できた.また,ガラス基板/Co/MnPt膜を作製し,Co層の磁気ヒステリシスのループシフトからピン止め効果を評価した. as-depo.状態でCo層厚が200Åのとき, MnPt層厚200Å以上で30Oeにループシシフトを得ることが出来た.熱処理を行うことにより更にループシフトが大きくなるものと期待している. ii)サンドイッチ膜GMRの熱的安定性:NiFeCo/Cu/Co, FeCo/Cu/Co膜の熱的安定性を明らかにした.NiFeCo/Cu/Co膜の場合,200℃以上の熱処理によりNiがCu層内に侵入し,抵抗率が増加した.また,Cu層内のNi原子のブリッジ効果によって磁性層間に強磁性相互作用が働き,その結果MR比が減少することが分かった.特に,300℃の熱処理によりMR比はほぼ0になった.一方,FeCo/Cu/Co膜では,Fe, CoがCuに対し非固溶であるため,熱処理により逆拡散が生じ,層界面の組成勾配は寧ろ急俊になり,250℃までの熱処理ではMR比は殆ど変化しなかった.350℃の熱処理では,RKKY相互作用が現われ,Cu層厚20,30Åのとき磁性層間に反強磁性結合が働き,MR比は増加することが分かった.
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