将来、ミリ波ないし短ミリ波用機能回路を集積化構成する際、回路素子は主に低損失誘電体を用いると想定される。本研究は、このような集積化回路中の誘電体導波路どうし、或は導波路と回路素子との間に生ずる電磁的分布結合現象を解明し、集積化回路設計の基礎資料を得ることを目的としている。平成8年度には、 (1)波動の伝搬軸に沿って結合度が変化する不均一分布結合部分における電磁波動の結合量算定法を、相反定理を用いて定式化した。 (2)(1)の結果を用いて、ウイスパリングギャラリモード(WGモード)誘電体円板共振器と近接設置した誘電体導波路との結合特性を解明し、結合がWGモード共振に与える効果を定量的に算定する手法を明らかにした。 (3)(1)の結果を誘電体リングとディスクで構成する偏心配置結合誘電体共振器に応用し、共振特性を精密に解析する手法を示した。 さらに平成9年度には、上記の結果を応用し次の研究成果を得た。 (4)高誘電率誘電体(ε_r〉24)導波路の基本伝送モードの特性を明らかにし、このモードの結合特性を調べた。 (5)高誘電率誘電体で構成したウイスパリングギャラリモード円板共振器の固有モード算定法を見い出し、このモードと外部回路との結合特性を明らかにした。 (6)高誘電率誘電体回路素子間では素子相互の分布結合が極端に低減する場合があり、この結合を一定量に制御する手法を検討した。
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