本年度は主として、GPS信号の受信状態の安定化に関して計算機シュミュレーションにより検討を行った。GPS測位においては、その誤差要因の大多数は、各種の周辺技術の導入により取り除かれつつあるが、マルチパスに起因する誤差に関してはその方法がほとんど確立されていない。そこで、GPSの単独測位方式及び搬送波位相を用いる測位方式(リアルタイム・キマネティックGPS)等において、マルチパスに起因する受信信号の乱れをエコーキャンセリングの技術と同様の手法を適用して取り除く受信処理を検討した。その結果、より高精度かつ高速な測位を実現できる可能性を確認した。具体的には、まずGPS受信機で得られる初期同期信号を手がかりして、GPS測位における主要誤差要因の一つであるマルチパス信号を推定する。その後、推定結果を利用して受信機側でマルチパスの複製を行い、これを受信信号より減算することで、受信波に含まれるマルチパス信号を根本的に除去する。このようにすることで、拡散コード信号を用いる場合はもちろん、搬送波位相を用いる測位においても位相の誤差を軽減させることができ、高精度に測位を行えると考える。また、昨年度までの研究成果から、リアルタイム・キマネティックGPSで必須の技術である初期位相の高速解明技術、サイクルスリップの検出技術に関して検討が行われており、本年度の研究成果と融合させることによって、リアルタイム・キネマティックGPSのさらなる高精度化、高安定度化が図れるものと考える。
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