研究概要 |
本年度は本研究課題に対する最終年度であり,また当該研究代表者が長年にわたるこの分野の研究に一段落をつけねばならない年度であったことから,“まとめる"ということを一つの主眼点として研究推進を行った.以下,その要点のみを述べる. まず本研究課題に関しては,トレリス手法を二次元的に拡張すると共に,近年誤りが生じ易い波形パターンのみを除去するという,非線形特性を持つ新たな考え方に基づき開発され,今後大いにその有効性がMTR(Maximum Transition Run)符号に適用し,二次元MTRトレリス符号を新たに開発した.そして,このクラスの符号をいくつか構成すると共に,従来用いられて来ている符号とビット誤り率(BER)に関して規格化線密度Kの高い環境化で比較検討し,K=5.0のような超高密度になる程この符号はその有効性が益々発揮されることを確認した. さらに,記録符号,パーシャルレスポンス(PR)等化,Viterbi検出アルゴリズムいずれもが有限状態オートマトンモデルで表現できることに着目し,これら機能を有機的に結合する,TCPR(Trellis Coded Partial Response)への機能拡張により,BER=10^<-5>でK=5.0では単なるトレリス符号よりさらに読み出し点の所要SN比改善は10dB以上得ることができた. なお,ここに示した二次元MTRトレリス符号は,その可能性と有効性を確認するための基礎検討的な意味合いを有するものであり,今後さらに二次元手法,MTR手法,ならびにTCPR手法それぞれの展開が大いに期待できることから,本研究の二次元MTRトレリス符号は将来の記録符号に関する研究のあり方を強く示唆すると共に,この符号自体極めて有望視できる記録符号/信号処理技術といえる. その他には,磁気記録システムにおいて超高密度化への要望が年々高まる中,d制約(すなわち磁化反転の最小間隔)や符号化率η(≦1)の改善に注目が集まっている.このため,η=8/9,16/17の符号の延長として,η、24/25及び32/33の符号を開発した.このような高符号化率の符号では,従来は符号化則が極めて複雑となり,また符号化表が厖大なものとなる欠点があった.これに対して,データ語を細分割したサブデータ語を組み合わせて符号化則を構築する手法を導入し,シンプルな形でη=24/25や32/33の符号を容易に作ることに成功した.
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