本年度は以下の研究を行った。 1.遅延時間の超高分解能による多重波伝搬構造の解明 自作の3GHz帯多重波遅延時間測定装置(送信信号系列:200Mb/s PN符号)を用いて屋内の多重波伝搬特性測定を実施した。その結果、本装置の遅延時間分解能5ns(通路差換算:1.5m)を用いても十分と言えるほどに到来遅延波の分離をすることが出来なかったが、従来に比べれば遙かに良い精度で、多重波発生の原因を究明することが出来た。また、2.の屋内多重遅延波の予測結果と良い一致を見ることが出来た。 2.屋内多重波伝搬特性の解析 Ray tracing法による3次元屋内多重波伝搬の予測を行ない、測定結果の検討を行った。予測では、窓からの透過により発生しなくなる反射波を考慮することで、より、実測結果に一致する遅延プロファイルを求めることが出来るようになった。これにより、今後の「能動フェージング」の発生方法の検討がより現実的なものに近付いた。また、この予測結果を用いてワークステーション上で、PSK-RZ方式を用いたディジタル伝送シミュレーションを行うシステムを開発し、能動フェージング発生の要件について考察が出来た。その結果、複数の指向性アンテナから搬送波に一定の位相回転速度を持たせて送信する方法が可能であることが分かり、またその位相回転速度を適切にすることによりPSK-RZ方式が従来検討されていた多重波に対して示す誤り率改善効果を発揮できることが明らかとなった。 3.ディジタル信号処理方式の検討、シミュレーション 本年度はパソコンベースの任意波形発生回路及びシミュレーションシステム構築のための基礎検討を行い、ハードウェアシミュレーションシステム構築の見通しを得た。
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