本年度は以下の研究を行った。 1.能動フェージング発生法一般化の検討 昨年度の検討結果を基に能動フェージング(以下Active fading)の具体的な発生方法について検討した。昨年度に引き続き3次元屋内多重波伝搬の予測結果を基に計算機シミュレーションにより屋内遅延プロフィールを求め検討を行った。その結果、部屋の中心の天井付近に複数の指向性アンテナをわずかにずらせて配置し、送信すればほぼ同じ遅延時間に異なった位相で受信点に到来する複数の波を発生できることが分かった。また、各アンテナから送信する搬送波の位相の回転速度を互いに倍数関係とならないようにできるだけランダムな値を選ぶことによりPSK-RZ方式が従来検討されていた多重波に対して示す誤り率改善効果と同じ効果を発揮できることが明らかとなった。 これらの検討にはPtolemyと呼ばれるU.C.Berkeleyで開発されたCADソフトウェアを使用してグラフィカルに結果を見ることのできるツールを開発して行った。このツールを将来的に発展させて統合的な屋内伝搬、伝送シミュレーションツールへと展開していく予定である。 2.屋内実験系の整備と誤り率測定 昨年導入した度本年度はパソコンベースの任意波形発生回路と本年度拓殖大学から譲り受けたフェージングシミュレータ、通路差シミュレータ、雑音干渉テストセットなどの装置を組合わせてディジタル伝送室内実験系を構築した。本実験系を用いて伝送シミュレーションを行ない周波数選択性レイリーフェージング下でのPSK-RZの誤り率改善効果を確認することができた。また、屋内多重波伝搬予測結果で得られた遅延プロフィールを用いたActive fading環境下での誤り率測定を行い、実験的にその効果を確認した。
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