本研究は、工場の流れ自動検査工程において、多層プリント基板のような対象物内部を3次元的に可視化して内部検査をしたい、という社会的要請に対応するものである。つまり、「傾斜スキャン」と呼ぶスキャン方法と「高速モデル再構成法FMR」とを組合せることにより、新しい3次元画像再構成原理の創出を目指している。 本研究では、まず計算機シミュレーション実験を行って画像再構成を確認して、次に実際の軟X線装置に傾斜スキャン機構を改造取付けて、X線投影データを計算機へ取込み、画像が再構成されるように調整を試みた。 1.3次元対象空間に対して、傾斜スキャンの各投影方向から平行ビームを照射して、連立線形方程式を立て、打切り特異値分解により一般逆行列を計算して、3次元の画像再構成シミュレーション実験を行った。その結果、良好な画像が再構成されることを確認した。標本点間隔やビーム間隔、投影方向数を色々変えて、再構成される画像と原画像との誤差や再構成時間等の再構成性能に関する評価実験を行った。 2.購入する軟X線装置について、傾斜スキャン操作が可能になるようにX線発生源を回転する機構を設計して、45度傾斜からX線照射した時にイメージインテンシファイア上の投影画像を実時間で取出せるように設計した。このように傾斜スキャンに関連する機構や取込み方式の改造方法を明らかにして、可能な軟X線装置を購入した。 3.この軟X線装置を導入し、X線照射した時の投影画像を計算機へ取込む実験を行った。投影画像にノイズが多いので、画像処理装置で移動平均による平滑化処理を行い、ほぼ良好な投影画像を得た。次にX線の投影空間における位置が計算機へ取込んだ投影画像においてどの位置に対応するのか、位置調整をして有効領域を決めた。こうして得た投影データから再構成計算を行ったところ、良好に3次元画像再構成されることが分かった。
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