研究概要 |
本研究では,センサのフロントエンドにおいて多くの情報処理と効率的な音響情報の採取がなされるような新しい音響センシングの構造を,人間の聴覚機構をモデルとして実現しようとしている.具体的には,基底膜の周波数分析機構としてのモデルをより詳細に分析し, 1. それらを相互作用をもつ共振体アレイとしてモデル化すること, 2. このモデルと電気機械的アナロジーに基づき,音場のセンシングと周波数選択の力学機構として,ばねと質量からなる2次系集合体モデルを構築すること, 3. 隣接要素間に適切な相互作用を与えることで音響信号の移送と授受の場を形成すること, 4. これらを半導体微細加工技術により試作し,基本性能の確認と,音響センサと機械的アクチュエータへの応用を試みることが目標である. 前年度までに,基礎理論の構築および共振体アレイ構造をセンサとして実現するフィッシュボーン構造の初期設計を終えた.本年度の成果は下記のようにまとめられる. 1. 可能な振動検出法を検討し,物理的制約条件や変換効率から静電型およびピエゾ抵抗型の検出器が望ましいことを明らかにしたこと. 2. 不純物拡散によりフィッシュボーンにピエゾ抵抗型検出器をあらかじめ組み込んだ形での設計を行ったこと. 3. 半導体のマイクロマシニングによって,実際に30素子程度のフィッシュボーン構造を試作し,音響信号を周波数分解された電気信号として検出できることを確認したこと. 4. 理論的に予測される現象(エネルギー流の単方向性など)を確認したこと.
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