研究概要 |
本年度は同定と制御の統合化設計の観点から,(a)閉ループ同定法とロバスト制御系設計法の理論的な確立と,(b)実験装置の試作を並行しながら研究を進め,以下の成果を得た. 《1.ロバスト制御に適合した閉ループ同定手法の検討》 システム同定の分野では,実験データから制御対象の状態空間表現の係数行列を直接求める「部分空間同定法」が多入出力系に適用できることなどから注目されている.本年度はこれに関して,雑音に対する非ロバスト性を克服する手法,および制御対象の極に関する部分的先見情報を活用する方法を提案した。 《2.統合化設計に適したロバスト補償器の設計法の検討》 近年,LMI(線形行列不等式)を基礎にし,数値的最適化手法を用いて制御系を設計する手法が,幅広い設計仕様に対応できるものとして注目を集めている.まず,LMIによる設計手法の有効性に関して基礎実験によりその有効性を確認した.その後,LMIを基礎として,非線形補償と線形ロバスト補償器を組み合わせた場合の全系のロバスト性解析手法を確立した.また,LMIによる低次元補償器の特徴付けを行った. 《3.実験装置の試作》 実験装置として,ラジコン・ヘリコプターをベースとして,浮上体を設計・試作した.本年度は浮上体位置検出や各種センサ信号の入出力装置部の試作を完了し,実験装置を上下および水平面内の回転の2自由度に運動を制限した上で,基礎実験をおこない,制御系として基本性能を満たすことを確認した.
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