研究概要 |
制御系の設計計算には2つの要素の直列接続,並列接続,および各要素の逆要素を計算しやすい表現が好都合で,その表現が伝達関数である.一方,設計目標とする望ましい制御系の仕様はステップ応答曲線形状で考えるのが最も説得力がある.したがって望ましいステップ応答曲線形状を設計計算に都合のよい伝達関数表現と関係付けることが重要になる.本研究ではそのために,1)伝達関数(の分母系列表現)の係数を系統的に変化させて,ステップ応答曲線データを採集し,2)ステップ応答曲線形状を分類し,3)分類されたステップ応答曲線形状が伝達関数(の分母系列表現)の係数空間においてどのように分布するかを明らかにした.2)においては,単位ステップ応答が1になる状態を“0",i階の導関数がゼロになる状態を“i"と呼んで,それらの継時的に現れる順序系列によってステップ応答曲線を類別すると,安定系,不安定系,減衰振動系,非振動系,寄生的振動系などが容易に分類できることを明らかにした.この系列を“ゼロ点系列"と呼ぶことにするが,たとえば平衡値の上下にバランスよく振動する減衰振動系は{320312031203・・・}になる.さらに,バランスの採れた減衰振動系について行過ぎ量の大きさで分類して,望ましい制御系として許容しうるステップ応答の分布を明らかにした.この許容範囲を超直方体で切出して制御系の分母系列表現の係数への不等式条件を設定し,制御対象の分母系列表現の係数の想定変動範囲に対して,不等式条件が満足されるように補償要素・制御装置の係数を決定するロバストI-PD制御系の設計公式を導出した.また,設計例によってその有用性を確認した. ここで得られたステップ応答の分布は基礎データとして一般性があり,さまざまに活用できるが,PID制御系その他のロバスト設計公式の導出にも使えるので,今後さらに設計公式を拡張する予定である。
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