本研究では、圧縮強度100N/mm^2以上の超高強度コンクリートのクリープ・収縮特性を実験的に把握し、さらに超高強度コンクリートを用いたPCおよびPRC部材のプレストレス導入後から死荷重を受けた後の長期変形・ひび割れ幅のメカニズムとその解析法を検討するものである。平成8、9年度にかけて行った研究成果の概要は以下の通りである。 1.重ね合わせの原理を用いれば、乾燥収縮は乾燥開始後から発生する自己収縮の約70%の割合で比例的に増加し、その比例定数は乾燥開始材齢に依存しない。 2.載荷時材齢および乾燥開始材齢の異なる超高強度コンクリートのクリープ・収縮試験から得られた結果をもとにMC90の予測式を改良した。 3.クリープの載荷時材齢を考慮した重ね合わせの原理に基づくクリープ解析は、超高強度コンクリートの材料特性を適切に取り込むことによって、自己収縮によって導入される鉄筋の拘束ひずみを精度良く予測できるとが認められた。 4.実測された鉄筋ひずみの最大値から平均値を差し引くことによって求めた付着によるテンションスティフニング効果は、鉄筋比が0.37〜0.64%、作用している最大鉄筋ひずみが650〜1000(×10^<-6>)の範囲では普通強度(45N/mm^2)コンクリートに比べ、超高強度(105N/mm^2)の場合は10〜20%程度大きい結果を示した。 5.超高強度コンクリート部材の載荷後の経過400日における平均曲率は、普通強度コンクリート部材の場合の約63%であった。曲率におけるMC90によるテンションスティフニングの評価は、鉄筋応力の高い段階ほど精度がよいことが認められた。 6.コンクリート標準示方書(平成8年制定)設計編の有効曲げ剛性式は上記の超高強度コンクリート部材に対して実用的には満足しうる精度であることがわかった。ただし、圧縮鉄筋のある場合には、変形を過小評価することを考慮しなければならない。 7.RCおよびPRC曲げ部材のひび割れ間要素の時間依存性変形解析のための、コンクリートおよび付着すべり関係に重ね合わせの原理を適用した、付着に基づく基礎方程式を定式化した。
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