我国においては昭和62年度以来コンクリート構造物の設計は限界状態設計法に依っている。しかし、トンネルなどのように、地中に建設されるコンクリート構造物の設計は、いまだ許容応力度法に留まっている。地上に設けられるコンクリート構造物の設計が限界状態設計法であることから、現実に地中構造物を設計する実務者からは、地中構造物に対する限界状態設計法の早急な確立が強く望まれてきた。そのためには、地中構造物を取りまく地盤と構造物が一体となった力学の体系を確立することが不可欠である。 本研究の目的は、構造物周辺の地盤の安定性及び構造物の安定性を限界状態時に発生しているひずみエネルギーによって判定するための指標を確立することにある。 平成8年度は対象とする構造物をシールド・トンネル、地中連続壁、ボックスラーメンの3種類とし、粘性土、砂質土、あるいはそれらの互層中に埋設されたコンクリート構造物について、それぞれ有限要素法による解析を行った。すなわち、周辺地盤に発生する形状弾性ひずみエネルギーを算出することによって、地震時における地中構造物周辺地盤の塑性崩壊挙動を求めるとともに、地中構造物に作用する土圧の分布を検討した。その結果、土被りが大きくなるにつれて、地盤が終局状態にいたる震度は高くなり安全になること。粘着力比、内部摩擦角によって、地盤の崩壊が大きく左右されること。比較的粘性土よりも砂質土の方が地震に対して安定であること、などが明らかになった。 また先の阪神淡路大震災におけるボックスラーメンの地下鉄駅崩壊を同様の手法で時刻歴解析を行い、中柱崩壊にいたるまでに、周辺地盤が塑性化していたことを確認した。 現在本年度の結果を取りまとめ、トンネル工学研究論文報告集に発表すべく、準備中である。
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