研究概要 |
本研究では,実際の河床波と相似な滑面河床波上に非定常流を流した状況下で,(1)染料による可視化実験,(2)一台のみのレーザ流速計による多点計測,(3)二台のレーザ流速計を用いた同時計測,(4)濃度計との同時計測,を統合的に行い,増水期から減水期にかけての非定常流特有の時間変化特性と乱流特性量との関係を明確にすることを目的とする.この結果から河床波背後に発生する剥離渦,ならびに再付着点から発生するコルク・ボイル渦の時空間的渦挙動を捉え,最終的に非定常性を考慮したそれぞれの渦の物理モデルの提案を行った. これらの実験・解析では,まず染料注入法および水素気泡法を組み合わせた可視化実験を行うことによって組織渦の発生周期,波長,移流速度などを調べ,組織渦の基本的かつ全体的な構造を捉える.次に一台のレーザ流速計および波高計を用いた多点計測を行い,平均流速,乱れ特性量および再付着点距離をその時間変化特性を中心に評価し,後述する二台のレーザ流速計を用いた同時乱流計測および濃度計測結果の解析のための基礎的な知見を得る.さらに,二台のレーザ流速計と波高計を用いた同時計測を剥離渦,コルク・ボイル渦それぞれについて行い,従来型時空間相関と条件付きサンプリング手法といった二つの解析手法を援用・修正することで,河床波背後に発生する組織渦の時空間構造に与える非定常性の影響を捉える.先に示した可視化実験における染料注入法と濃度計,さらにレーザ流速計と波高計をも組み合わせることによって濃度計測を行い,濃度分布特性とその統計的性質,条件付きサンプリング手法による解析を行う.これら一連の実験結果を統合的に踏まえた上で,洪水時の増水期・減水期の相違を考慮した,組織渦の挙動に関する物理モデルを,剥離渦,コルク・ボイル渦のそれぞれについて考慮することにする.
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