研究概要 |
本研究は,道路施設の有効利用を促すための1方策として注目されている,交通需要マネジメント方策(TDM方策)の導入効果の予測・評価を試みるものである.分析を通じて,日本における望ましい,もしくは必要なTDM方策を模索する. 本年度は,主に文献調査による各TDM方策の特徴,背景,経緯,問題点をまとめるとともに,アンケート調査の設計・実施を行った.また,ネットワークレベルでの評価を行うための交通機関分担を表現する,交通機関選択モデルの構築も行った.分析内容及び成果は以下の通りである. a)米国などですでに実施されている交通需要マネジメント方策について,各方策の実施主体,実施対象,実施効果,および実施までの背景・経緯をまとめ,それぞれの特徴を把握した,b)大阪都市圈を対象として,事業所に配布するアンケート調査を設計・実施した.調査は,自動車利用誘発の大きな要因である勤務先へのアンケートとともに,自動車による通勤者に対しても個人アンケートを行った.分析の結果,1)業種によって,マイカ-通勤削減の必要性に対する認識は大きな隔たりがある,2)社用利用の有無が出勤時交通機関選択に大きな影響を及ぼす,3)快適性など観測の難しい要因が手段選択に影響を及ぼす可能性がある,などの知見を得た. c)アンケート調査の中で質問したSPデータを用いて,各方策導入時の自動車利用者の交通機関選択をモデル化した.本年度においては,ロードプライシング方策を例にとって,料金や所要時間の短縮等が実現する場合の自動車利用者の公共交通機関への転換のモデル化を試みた.推定結果より,1)現在自動車通勤を行っている人のうち,約1割は潜在的に公共交通へ転換する可能性がある,2)交通手段選択に対して,大きく影響を及ぼすものとして,公共交通機関の利便性が挙げられ,自動車に代わる,代替交通機関の整備の重要性が明らかとなった.
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