1.前年度成果の取りまとめ:前年度の調査事項であった研究対象地における・水辺空間イメージ、・沼空間における自然空間の様態と人間活動との繁がり、・沼辺空間の後背都市との繁がりの各項目を、地勢・自然環境-地域環境認識-人間活動の一連の繁がりに沿って整理を行った。ここから、河川後背沼地環境の変容を、重層的意味システムとしての空間の乖離・解体過程として説明し、(1)重層的空間システムを含めた環境の復元、(2)現代社会システムに対応した環境システムの再構造化の2点を空間設定・計画上の留意点として示した(結果は1997年度土木学会環境システム研究において発表)。 2.都市計画、空間造形技術の収集・整理:研究対象地において1980年代以降に策定・実施された都市計画、空間造形事例を収集した。これらの事例の計画・設計プロセスを上記2項目に沿って分類し、その内容を計画・設計技術体系として整理すると共に、河川後背沼地環境における位置付けや意義を明らかにした。また、計画未策定地域にける試験設計・計画を行い、具体的な計画・設計案の策定プロセスを提示した。 3.比較対象地における事例調査:1.の枠組みを、河川後背沼地に立地する他の都市変容事例に適用し、分析・比較考察を行った。古河市のケースでは、沼地環境の消失、社会システムの変容を主因として、河川後背沼地を中心とする既往の地域環境システムの崩壊が見られた。これに対し、(1)ある程度の河川・沼地環境が保全されながらも社会システムの変化に地域環境システムが影響を受けている場合(新潟県新発田市)、(2)古河市よりも早い時期に沼地環境の消失が起こり、現在まで度重なる社会システムの変容が起きている場合(東京都碑文谷地区)、の2ケースを選定し、事例調査を行った。これらの事例相互の比較を行い、取りまとめを行う。
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