研究概要 |
本年度は2,4,6トリクロロフェノール(2,4,6TCP)の還元的脱塩素過程、その反応に関与する細菌、および硫酸塩還元反応や硫化水素の影響等について調べるため、嫌気消化汚泥を植種した回分式および連続式の反応器を用いて実験を行った。 嫌気的環境において、2,4,6TCPは還元的に脱塩素され、2,4ジクロロフェノール(2,4DCP)を経て、4クロロフェノール(4CP)と2クロロフェノール(2CP)に転換されることを確認した。このとき、2、4、6TCPはその95%以上が4CPに転換され、2CPに転換される割合は5%以下であった。生成された4CPはほとんど分解されずに系内に蓄積したが、2CPはさらに脱塩素されてフェノルに転換された。 2,4,6TCPの還元的脱塩素に対するメタン生成細菌(MPB)と硫酸塩還元細菌(SRB)の関与を調べたところ、2,4,6TCPから4CPと2CPまでの脱塩素反応はSRBが直接関与しているが、2CPのフェノールへの脱塩素反応はMPBによって行われることが明らかになった。さらに、MPBによる2CPの脱塩素にはSRB以外の真正細菌が間接的に関与している可能性があることがわかった。 MPBによる2CPの脱塩素過程でのSRBによる硫酸塩還元が起こる場合、MPBの脱塩素活性は硫酸塩還元により生成される硫化水素の毒性により阻害を受けることが明らかになった。MPBの脱塩素活性は硫酸塩50mg/L程度から生成される硫化水素でも大きく低下し、100mg/L以上になると完全に停止した。このように、メタン生成活性と比較してMPBの脱塩素活性は硫化水素に対してかなり感受性が高く、自然界あるいは処理プロセスにおいてもクロロフェノールの還元的脱塩素反応が硫化水素の影響を強く受ける可能性があるものと考えられる。
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